liner notes 「explode -Rebirth-」
ネット配信を中心に活動するソロアーティスト 「紗騎 -SAKI-」が2003年に発表した1stアルバム 『explode』を2016バージョンで 再レコーディングした『explode -Rebirth-』がYouTubeで公開されている。
2003年の『(元祖)explode』は 紗騎が20代前半まで在籍したバンドの楽曲の集大成的なアルバムであるが、 紗騎本人も持っていないという非常にレアな音源となっている。
現時点での紗騎の音源は 2013年に発表されている4thアルバム『rudra』が最新アルバムになるが、 その『rudra』発表後に、
「原点に返り、自分を見つめ直す為に」
そして、ファンからの【『explode』を聞いてみたいという声】が多数届き、 再レコーディングを決意したという。
01. explode
アルバムタイトルの1分強のインストナンバー。
エスニックな香りのする怪しいギターと 爆発したようなディストーションの効いたベースで『explode-rebirth』は幕を開ける。
02. I LOVE YOU
これ以上ないストレートなタイトル(笑) だが 疾走感のあるロックサウンドで壮大なラブソングに仕上がっている。
突っ走るドラムにバッキングのギター、ベースが様々な音色を聴かせ、紗騎の甘く切ないボーカルメロディがクセになる曲だ。
ミュージシャンの1stアルバムの最初の曲というのは 演者にも聴き手にも特別な曲であるものだが、若さが溢れるアンセム的なライヴ映えしそうな楽曲だ。
03. knight of night
ハードロックのリフとスカのリズムが交錯するロックチューン。
この曲では、紗騎の「I LOVE YOU」からの声のトーンの変わりように驚いてしまうこと必至だ。
シンプルなメロディだが紗騎の低音を効かせた声で歌い上げるボーカルは聞き物である。
バンド時代の原曲はディストーションが効いたデジロックだったそうだ。 (そのバージョンも聴いてみたい)
優しく不思議なクリーントーンのギターに乗せて 紗騎が目の前で語りかけてくるような感覚のメッセージソング。
「華々しい最期を遂げる」という意味のタイトルであるが、 大切な人を失った絶望感の中、 この世を飛び出そうとするような歌詞の内容に驚く。
オルタナティブの要素を持ちながら、 ポップなようでポップではないところが紗騎の狙いなのだろうか。
05. 君が居てくれたから
紗騎の優しいメロディが非常に心地よいポップな佳曲。 大切な人に向けられた曲であることがわかる。
歌詞からは特別な「君」へ向けた覚悟が感じられる。
曲によって声色を変える紗騎の幅広い音楽性には驚いてしまう。
06. undissolved snow
この曲ではおそらく 「explode -rebirth-」で 一番エモーショナルなボーカルを聞くことができるのではないかと思う。
曲に合わせた感情を表現できる紗騎の切ないボーカルが冴えわたっている。
タイトル 「undissolved snow」には 「恋心は雪のように溶けてゆくものだが、別れの春が来ても想いは溶けない」という意味が込められている。
07. ナイトメア
ザクザクのメタリックなギターリフから始まるこの曲は 1997年に作られた初期の曲である。
メロディアスなボーカルで歌詞の内容は 「恋人と死別した何も出来ない状態こそが ナイトメア=悪夢だということを歌っていて、せめて自分が眠るの中で見る夢では 笑顔で居てほしいという願いを込めたもの。」 と紗騎は解説している。
ギターソロもボーカル同様、非常にメロディアスでスリリングだ。
08. last kiss
「last kiss」は 「ナイトメア」と同じくバンド時代の 1997年に作られた歴史のある曲だ。
しっとりとした演奏に紗騎のウエット感のある ボーカルスタイルがうまくハマっている。
サビのメロディが非常に美しく悲しい。
バラードと言えるタイプの曲だが ドラムのリズムが変わるポイントにも注目してほしい。
09. eclair
紗騎も認める「explode -rebirth-」の核となる攻撃的なナンバー。
歌詞はエクレアのように甘いが これぞ紗騎の音楽スタイルといった攻撃力と繊細さを兼ね備えた美しいロックソングに仕上がっている。
ちなみにこの曲には、ギターがザクザクの 「eclair -69 side-」というバージョンもある。
気になる方は紗騎のブログ記事をご覧いただきたい。
10. haze
歪んだギターとボーカルだけで表現した珍しいタイプの曲だ。
シンプルな構成だが後半のギターが拡がりをみせ壮大なロックを表現できている。
1曲目のexplodeを古いスピーカーで聞いた様なサウンド。
アルバムの余韻に浸ることができる。
紗騎の若さが溢れ、多様な音楽性が感じられる楽曲の数々だが、「元祖 explode」と 「explode -rebirth-」を 聴き比べることが出来ないのが悲しい。
成長の軌跡を感じてみたかったからだ。
今は2ndアルバムの再録を行なっている最中というので、 紗騎の進化を震えて待つこととしよう。
著:ヨッシー